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外資系企業の労務管理

◆日本の会社との違い
外資系企業の労務管理を行う上で、覚えておかなければならないことがあります。
それは、「相手の常識は、相手の国の法律及び慣習である」ということです。

米国企業を中心に、よくある違いを確認したいと思います。
1.解雇について
「双方いかなる理由にかかわらず、いつでも雇用契約を解消できる」ときおり、外資系企業の雇用契約書に盛り込まれている事項です。
日本の労働契約法第16条には、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」
とあり、合理的理由がない限り無効です。
この点について、日本の解雇法制を理解してもらう必要があります。

2.給与の支払いについて
米国の企業などでは、通常給与は2週間おきくらいに小切手で支払われます。
日本では、給与の支払日に現金若しくは振込でなければなりません。
そうすると、「毎月第○週のいずれかの日では、ダメか?」と質問が来ますが、労働基準法第24条第2項に「毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。」
という条文があることを説明し、理解してもらわなければなりません。

3.ホワイトカラーエクゼンプション制度について
これは、ホワイトカラーで、かつ、ある程度の専門的業務に従事する労働者について、労働時間規制の対象から外すというもので、日本の管理監督者より広範囲な労働者が対象となります。
当然、雇用契約書にも「(基本給には、)全ての残業代を含む」とか「残業代の支払いはない」などと記載される可能性が高いです。
米国系の外資系企業は、一般的に、日本の同業企業よりも給与が高く、長時間の残業をすることが日本ほど多くありません。
よって、なかなか表に出ない問題でもあり、日本の労働者は退職後に未払残業の請求することがほとんどで、米国のように集団訴訟の制度がありません。
そのため、なかには請求があった場合のみ、個別に対応をすることにしている企業もあるようです。
この場合、事業場外みなし労働時間制や裁量労働制を組み合わせ、かつ基本給一本であることが多い給与体系に、住宅手当や家族手当など残業の算定から外せる手当があることを説明・指導することが大切です。
日本では当たり前のことでも、外資系企業では大発見となることが往々にしてあります。
まずは、双方の違いを理解することが重要です。

4.有給休暇の取得制度について
これは、主にヨーロッパの企業でおこるすれ違いです。
ヨーロッパでは、有給休暇は長期間取ることが前提で考えられています。
法律上も「使用者は労働者に、最低一年に一回、連続した二週間以上の有給休暇を与えなければならない」という規定がある国が多くあります。
当然使用者としては、1ヶ月前、2ヶ月前の事前の通知が必要であると常識的に考えるでしょう。
しかし、日本でそのようにすると、有給休暇取得の妨害とみなされる可能性があります。
ここも相互理解が必要な場面です。
また、長期休業に関しても制度上又は慣習の違いがあります。
私傷病の長期休業の場合、欧米では法的義務の有無に関係なく、有給による長期休暇を認めることが少なくありません。
その制度をそのまま日本子会社や日本支店に適用させることがあります。
しかし日本には、健康保険の「傷病手当金制度」や「出産手当金制度」があり、長期休業に対して、要件を満たせば国が所得保障をするシステムがあります。
この制度の説明をするととても驚かれます。
また、海外療養費と言って、海外で治療を受けても全額負担をしなくて済む制度があることも知られてはおりません。

このように、社会保障制度も含めて労務管理について、社会保険労務士の助言・指導が必要な場面が多々あります。
しかし通常外資系企業は、このような場合、外国法に詳しい法律事務所に相談します。
日本では、法律の専門家が専業化・分業化していることを知らないのです。
社労士自身も「Social Scurity Lawyer」又は「Labor Lawyer」と社会保障や労働関係の法律家であることをもっとアピールする必要があるでしょう。